森里海連環学
沿岸域には,陸域から河川などを通じて水や栄養塩などの各種物質が流入している。そのため河口・沿岸域は,世界中の水圏の中でも最も生産性が高い。しかしながら,過度の栄養物質が流入すると富栄養化がおこり,赤潮や貧酸素などの環境悪化が起きる。豊かな生産性に基づく多様な環境を維持し,今後も持続的に沿岸域からの利益を享受できるよう,水質等を上手に管理することが大切である。
生物や栄養塩の同位体や濃度を調べることにより,森-川-里-海の物質循環を明らかにしようと試みている。
環境DNA
生物から分泌物などの形で放出され,水中や土壌に存在しているDNAを環境DNAと呼ぶ。環境DNAを調べることで,そこに生息している生物の種類や量などが分かる。水域における環境DNA調査は,生物を直接捕獲することがなく非侵略的なので,特に希少種や絶滅危惧種の調査に有効である。
数値シミュレーション
海洋に生息する動物は一般に多産であり,わずかな生き残りによって世代をつないでいる。産み落とされた卵や稚仔は海流によって輸送・拡散されるため,生残に好適な環境に運ばれたもののみがその後の資源に貢献する。その様子を数値シミュレーションによって解明し,水産資源の変動解明を試みている。
これまでの学部生,大学院生の研究テーマ
沿岸域生態系
- 窒素安定同位体比を用いた北海道沿岸域の一次生産に対する河川由来栄養塩の寄与
- 仙台湾におけるスズキの卓越年級群の形成とその要因
- 丹後海におけるスズキ仔魚期の成長・生残に関する研究
- 安定同位体比に基づく瀬戸内海東部における食物網の解明
森里海連環学
- 河川から函館湾に流入する懸濁物、窒素・リンの負荷量の推定
- 函館湾に流入する河川の水質と土地利用の関係
- 非線形時系列解析による宍道湖における塩分変動要因の解明
- 函館湾におけるCOD上昇の要因の解明
環境DNA
- 環境DNA調査によるニホンウナギの分布特性の解明
- 北太平洋における環境DNAメタバーコーディング法による魚類群集構造解析
- 水温がニホンウナギ環境DNAの放出量と分解速度に及ぼす影響
- 堰がニホンウナギの分布に及ぼす影響 ~環境DNAによる推定~
- 環境DNAによるブラウントラウト資源量の評価